活躍中の卒業生に聞いたパレットクラブの魅力

信濃八太郎

4期、5期イラストコース卒業

しなの・はったろう…1974年生まれ。日本大学芸術学部演劇学科舞台装置コース卒業。最近はダンスの舞台美術でアニメーションを作る。雑誌、書籍、広告などでも活躍中。
http://www.shinanohattaro.com/

●パレットクラブ スクールに通うきっかけ

日大の演劇学科の舞台美術コースに通ったけど、すぐに挫折してこの世界ではやっていけないなと思ったときに、大学の安西水丸ゼミに出るようになりました。卒業して社会に出たら、仕事が忙しくなってストレスになっていたところ、パレットの広告を見て、うちの近所で面白いことがあるんだーと思って見学に行きました。
深い考えがあって行ったわけでもなく、水丸先生によく褒めてもらっていて、また仕事の合間にそんな感じをまた味わえたらいいなって。授業では全然褒めてもらえなかったんだけど(笑)。子供の時から絵を描くのが好きで、クラスで上手い人と扱われ、そのまま勘違いしてました。
見るのは好きだったけど、自分がイラストレーターになりたいとは思っていなかった。でも通ってすぐに、イラストレーターとして仕事ができたらいいなって思うようになりました。

●パレットクラブ スクールに通って

まずロケーションがいいですね。見学に行ったのが夜で、人気もなくて、オレンジの光があって、扉を開けるとバーがあって、秘密のアトリエみたいなところで、授業が受けられるのがうれしかった。聴講ができるのもよかったし、コース外の友達もたくさんできて、今でも付き合いがあります。 家も近かったので、よく聴講にも行っていました。当時、25、26才で、人の言葉に飢えていたから、たくさんいろんな人の話を聞けるのが楽しかったです。最初の期が終わったときにもう少しつっこんで勉強してみたいなと思っていて、もう1期通うことになりました。

●授業

原田治先生の最初の授業で、出版界の現実の話、成り立つイラストレーションについて話を聞いて、落ち込んだりもしました。でも、ただ絵を描いて楽しいのではなく、それを続けていくにはどうしたらよいかを考えるきっかけになりました。水丸さんの授業では、講評するときに、絵だけでなく、名前をそれぞれ呼んで、どういう人かを確認してから講評を始めていました。どういう人が絵を描いているのか見るために。人間の魅力があって、その人の絵があるんだなと知りましたね。

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●最初の仕事

婦人之友社の雑誌のカットが最初の仕事ですね。それと、知人の紹介で、ベネッセの教育用の小さなカットを2年間やっていました。当時、自由学園明日館の修理工事の事務仕事を6年弱していました。その後に2年だけ、絵だけで食べていました。2年間カットの仕事ばかり描き続けていて、充実感もあったけど、なんとなく自分の絵を真似するように感じていた時期でした。それでファイルを作って売り込みに行こうかと思っていたときに、水丸さんにファイルを見せたら、「こんな絵を描くんじゃダメだな」と言われ、目が覚めました。 今までの仕事をするのがいやになっていたら、自然に仕事が減って来た時期があったので、絵の仕事はすべて辞めて、ペーターズギャラリー、パレットクラブでも働きだしました。ギャラリーで働いていると毎週作家さんがいらっしゃいます。その方たちと話をしているうちに、自分の絵に対しても客観的に見られるようになって、自分の好きな絵を描こうと思うようになりました。半年くらい描かなかったんだけど、また落書き気分で描くようになり、絵がたまったので、2005年の9月に個展をしてから、仕事をもらうようになりました。

●仕事

雑誌『GQ』、『野生時代』、ヤマハ音楽教室の広告などをやらせてもらいました。『CasaBRUTUS』では絵を紹介してもらいました。『カクテルのホントのうんちく話』(柴田書店)の表紙、中のカットなども手がけました。
今描いているのは、手描きで描いて、パソコンに取り込んでいます。展覧会のときは、シルクで刷ったりもします。構図を決めると描けないから、後からパソコン上で構図を考えたりしますね。
作品はモノクロが多いです。モノクロにこだわっているわけではないんですが、線画が好きで、いい絵を描きたいと思って線画ばかり描いていたら、仕事をするようになって。
GQはカラーの依頼だったので、描いてみたら楽しかったので、もう少しカラーで描いてみたいなと思います。
最近は自分の絵を取り込んで、簡単な動画みたいなものを作るのにハマってまして、ダンスの人たちの舞台美術としてアニメーションを作ったりしています。自分の好きな曲に絵をつけたら楽しいかなと思って。子供のころに作ったパラパラマンガの感動を再び、みたいな感じで楽しくって、友達に見せたりしたのが始まりです。一昨年の5月にはウクライナのダンスフェスティバルに出展。ウクライナの人たちの前で発表してきました。韓国、アメリカ、スウェーデンなど、各国のダンスの人たちが参加しているイベントです。その後、エッセイストのパーティーやパーカッション、ヘアスタイリストのイベントでも上演しました。これからは、映像の仕事をやってみたいです。自分でストーリーを考えて、アニメーションを作ってみたい。今までイラストレーションがそんなに関わっていなかったところで仕事をしたいんです。イラストレーションの裾野を広げていけたらいいなって思っています。

●影響を受けた人

長新太さん、和田誠さん、安西水丸さんです。『NEW YORKER』のカット集、カバー集。そればっかり飽きずに毎日見ていました。ベンシャーン、スタインバーグ、サンペも好きですね。

●生徒さんへのアドバイス

いつも後ろから眺めていて思うのは、早いうちから飲みに行ったり、仲良くなっちゃったほうが絶対1年が楽しくなる。そういう繋がりができるのが教室の魅力でもある。みんな自分の絵を見せにきているわけだけど、他人の絵にももっと興味を持って、どんどん話すとクラスの雰囲気もよくなって、仲良くなったクラスはレベルも上がってくると思います。