活躍中の卒業生に聞いたパレットクラブの魅力

前田ひさえ

7期編集コース卒業

まえだひさえ…多摩美術大学デザイン科卒業。イラストレーション誌『ザ・チョイス』171回入選(池田進吾氏審査)。雑誌・書籍や、プロダクト等の仕事のほか、アトリエであるkvinaのメンバーとしてセルフ・パブリッシングなどの活動も行っている。
http://hisaemaeda.com/

●パレットクラブ スクールに決めた理由

『Olive』誌上の広告を目にしたのがきっかけでした。学校の立地が銀座に近い築地、そんな場所に通うなんていいな、という軽薄な理由もありましたが学生の時、安西水丸先生のイラスト塾に通ったことがあって、それはイラストレーターを目指して、というより、安西先生のファンで、通ったようなものなのですが月1回のカルチャースクールのようなものにも関わらずとても面白かったし、学ぶことも多く、パレットもそれに近そうだな、と思い選びました。
大学ではグラフィック・デザインの勉強をしていましたがどうもデザインに向いていないな、と気付き、でも、何かしら美術に関わる仕事がしたい、と迷い、考えていた頃でもありました。

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●パレットクラブ スクールに通って

多種多様な講師の方々にお会いして、お話を聞けることが、面白かった。先生が大勢なぶん、言うことも異なるので毎週いろんな考えを聞きながら、「自分の気持ちにはこの考えが近いな」とか自分が進んでいくうえでの、指針というか、何を大事にするかということを、すこしずつ、見つけていくことが出来たように思います。
その時は、自分の考えとはちがうな、と思うことがあってもあとあとになって、合点がいくこともあったりして先生の言葉は、それぞれ経験に裏打ちされてるもので、一聴の価値ある、興味深いものだったと思います。
厳しい事も言われたり、時々は背中を押すような事を言ってもらえたり思い返していると、いろいろよみがえってきました。夜の授業だったので、働きながら通えるのも、よかったです。

●編集コース

7期入学の時点では、イラストレーターを目指していました。編集コースにした理由は、編集視点からのお話を聞いたり、使う側から絵を見ていただくほうが自分にとっては面白いかも、という勘で決めました。
当時はまだ、絵を本格的に描きはじめていなかったのですが、描きたいイメージはくっきりしていて、絵を描くうえでの迷いが、あまりなかったせいもあるかもしれません。結果、わたしにとっては、編集コースが面白かったと思います。
ただ、描きたいイメージはあったものの、そのイメージを絵に置き換える技術が、今よりもさらになかったので、のちのち四苦八苦したし、イラストコースでもよかったのかもしれません、笑。
どのコースを選ぶにしろ、自分なりに学ぶことがかならずあって、小さなことでもいいから、自分がいま何を得たいのか意識したり何かきっかけを探す気持ちを持って、通えたらいいと思います。

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『Party Wolves』
音楽/pascal pinon、CDカバー画/前田ひさえ(violet and claire)

●授業

一番印象に残っていて、今もよく思い出すのは、ヒロ杉山先生の授業。自分で何かテーマをつくって、本の形にしてみる課題があってその時、今でいう<ジン>みたいなものを作り、<形にしてみる>をいうことの大事さに気付きました。頭でああでもないこうでもない、と考えていても駄目でとにかく描いて形にするしかない。
「絵を描くならたくさん描きなさい、3日も描かないとへたになる。」ということも、確かおっしゃってて、のちのち、本格的に描くようになったときに、実感を伴いながらヒロ杉山先生の言葉を、思いかえしました。
あと、すぐに役にたつ言葉、というよりも仕事を続けていくうえの態度や、大げさですが、生きていくうえでの態度、そんな言葉が、迷ったときなどに、意外と励みになっていたりします。

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『エルニーニョ』
著/中島京子、装画/前田ひさえ (講談社)

●最初の仕事

2008年に仕事を辞め、イラストレーターの仕事を意識的にスタートして、最初にした仕事は『PAPER SKY』という雑誌のなかで、サルバドール・プラセンシアの小説の、柴田元幸さん訳に、挿絵をつける、というものでした。PAPER SKY編集部から連絡が来て、それまで書店で働いていたこともあって、小説に絵をつけることが、とてもうれしかったことを覚えています。

●仕事

主な仕事は、本の装画や挿絵などです。そのほかにも、細々と何でもやっています。今後、やってみたいのは、絵本。絵本は、文を描ける方といっしょに、1冊まるごと完結した世界を作ってみたい。あと、いつもだいたい2Dの世界なので、平面じゃないものに、絵をのせてみたくて、プロダクトなど、3Dの仕事も機会があればやってみたいです。
また、作家、写真家、デザイナー、イラストレーターの4人からなるユニットkvinaではエスペラント語・英語・日本語の三か国語で本を作ったり、展示をしたり、ワークショップをしたり、という活動を、また、meme(ミーム)という3人ユニットでは布と絵をテーマに表現する活動をしています。どちらもひとりではできないことができ、個人の仕事とはまた別の面白さを感じています。

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『不安な演奏』
著/松本清張、装画/前田ひさえ(文藝春秋)

●影響を受けた人

しぼりきれないのですが......イラストレーター:宇野亜喜良さん、味戸ケイコさん、安西水丸さん、長新太さん、河村要助さん、nakabanさん
画家:ソニア・ドローネ、バルテュス、マグリット、ムンク、ホッパー、ホックニー、カレン・キリムニク、ローラ・オウエンス、ポルケ、など沢山......
絵本:バージニア・リー・バートン、ガース・ウィリアムス

●生徒さんへのアドバイス

あくまでもわたしの場合ですが、絵は、なにしろ描き続けて、自分で見つけていくしかない、と思います。ぜひ簡単にあきらめないで、続けてほしいです。あと、未完成でもいいから、「今の私の作品はこれです」という、そういうものを持って授業に臨んだほうが、おもしろいと思う。