活躍中の卒業生に聞いたパレットクラブの魅力

miyauni

16期イラストコース卒業

みやうに…miyauni/大藤(おおとう)めぐみと鈴木雄大によるアート・ユニット。2016年「ねずみくんとおおきなチーズ」でイタリアボローニャ国際絵本原画展入選。国内外で活動。

S→鈴木雄大さん
O→大藤めぐみさん

img

●パレットクラブに通うきっかけ

S:僕はもともと美大に行きたかったんです。事情があって行けなかったけれど、通いたいという思いはずっとあった。それで美大を出た彼女に相談したら、「一番ためになったのは作品講評だったから、多くの先生から指摘を受けられる学校がいいのではないか」と。自分の作品をプロに見てもらえる機会なんて、そうそうないですよね。それがパレットに決めた理由です。
O:デザインの観点から見てくださる先生がいるところなら、他のことをやりたくなった場合でも活かせることを学べるのではないかと思って、絵本コースではなくイラストコースはどうかとアドバイスしました。

●パレットクラブに通って

S:描くことは好きでずっとやっていたから、課題が大変ということはなかったです。作品を見て欲しいという気持ちが強かったですし。美大へ行きたいという思いを忘れるほど充実したパレットライフでした。

●授業

S:ヒロ杉山さんの授業で、「ボガロフと私」という課題で描いた絵を評価していただきました。”どうやって見る人を驚かせるか”を考えるのが好きだったので、ヒロさんに褒められたことはよく覚えています。
O:自信をつけてもらったよね。
S:そう。それとデザイナーの方の意見が興味深かった。実際にイラストレーションを使う人が考えていることを知ることができて、それは今でも役立っています。

img
『ぱたぱたえほん』
(エンブックス)

●影響を受けた人は?

O:昔は技法の面でたくさんの人の影響を受けていましたが、今はそれよりも生き方というか、人生観や考え方で影響を受けることが多いです。
S:パレットでも講師の方に「今の自分のあり方・キャリアを過去に想像していましたか?」とよく質問していました。 たとえば以前講師をされていた坂崎千春さんは、本当に自分が可愛いと思えるものを大切に作って発表していった結果、自然にお仕事につながったと仰っていて。やはりそういうものかと納得しました。

●miyauniさんのあり方について

S:自分たちのあり方については、ほぼ毎日話して日頃からすり合わせています。それによってどの仕事を受けるかも変わってくるので。喧嘩はないですね。普段から、音楽、映画、絵、デザインなど好きなものがほとんど同じなんです。唯一違うものがあるとしたら僕はお笑いが大好きで、彼女はそれほど好きではないかも(笑)。
O:育った環境が似ているからでしょうか。両親に与えられたおもちゃや洋服も日本のキャラクターものより海外のものが多くて。マドレーヌちゃんとかセサミストリートとか。
S:僕はババールだったな。他には小さい頃、コールテンくんやピングーなどのストップモーションのアニメーションが大好きでした。コマドリで撮影していく「もの感」のようなものがすごく好きで、今でも制作の際は紙をちぎって貼っているので、子どもの頃に好きだった感覚で作っているのかもしれないです。どちらかがアイデアの種を思いついたら、それを二人で話し合いながらどんどん形にしていって、ラフを描く。最終的に配色を決めてちぎったりするのは彼女の仕事ですね。感覚やセンスが似ているので、制作中に意見が割れることもないです。

img
img
ミヤオ・ウニネン時代の仕事。
walking bicycleのショーウィンドー。

●初期の仕事

S:最初はウィンドウディスプレイやパーティー会場の装飾など、二人でなんとなくやり始めて「ミヤオ・ウニネン」という名前で活動していました。
O:ある時少し過酷な仕事があって。一度立ち止まって自分たちが本当に楽しめることをした方がいいんじゃないかと話し合っていた時に、ボローニャ展のことを知りました。締め切りまで時間がない中、急いで作ったのが初めての絵本です。
S:プロダクトとしての本の形というのはすごく魅力的で、絵本を作ってみたいとずっと思っていました。いろいろな仕事を経験する中で、自分たちは本当は何がやりたかったんだろうかと考えざるをえない状況に追い込まれ、その中でつかんだボローニャ入選でした。

img
『さがして!みつけて!カメレオン』展
2018年 無印良品 グランフロント大阪 Open MUJI

●ボローニャ国際図書見本市と絵本出版

S:ところが実際にボローニャに行ってみたら、あくまでも版権取引の場であって、売り込みの場ではなかった。もちろんアポイントなしで会ってくれる方もいましたが、僕らも初めてで何もわからず、特に収穫もなく帰ってきました。
O:ただ、あのタイミングで現地へ行っていろいろ学べたことは大きかったです。帰国後、翌年のボローニャ展へ向けて、新しい絵本を作ってしっかり準備しようという目標ができましたから。
S:そう。絵本のアイデアも世界中の人にアピールできるように、ストーリーで読ませるものではなく、言葉がわからなくても目で楽しめるものを作ろうと。海外の出版社にも事前にメールで作品を見せてアポイントを取り、現地ではダミー本を見せながら踏み込んだ話しをできるように準備しました。その結果、2回目のボローニャでフランスの出版社と契約できました。それがカメレオンの絵本です。
O:もう1冊の『ぱたぱたえほん』は、1度目のボローニャ展の後に、国内の知り合いの編集者の方から、赤ちゃん絵本を作りませんかというお話をいただいたのがきっかけです。ちょうどボローニャでお会いした三浦太郎さんから「赤ちゃん絵本いいよ」という話を聞いていて、僕らもグラフィカルな絵本が好きなので、作ってみたいと思っていたところでした。

img
『cherche et trouve le caméléon』
(MANGO JEUNESSE)

●最近の仕事とこれからやってみたい仕事

S:海外のお仕事としては、今『カメレオン絵本』の続編を作っていて、その次も考えています。『カメレオン絵本』はフランスと台湾で発売されています。国内/国外問わずやっていきたいですね。
O:それと並行して日本の出版社で赤ちゃん絵本を進めています。あとはワークショップです。
S:絵本を作るのが楽しいので、それをやり続けていきたい。アイデアはどんどん出てくるのですが、それを落とし込むまでの時間がないところです。 今自分たちがスッとできるのは、仕掛けやアイデア重視の絵本。今はまだひらめきませんが、ストーリー絵本もいつかスッと作れる時がくればやりたいですね。

●これからパレットに通う生徒さんへのアドバイス

S:先生がさまざまな角度から「こうしたら?」と提案してくれることを試しながら、自分でもあれこれ考えてやっていくと楽しいですよ。僕らの仕事も、その時その時に楽しいことをやってきて今の形になっているんです。

影響を受けたもの

img
鈴木さん:ババールの寝具、食器、ランスに住んでいた親戚からのプレゼントのネズミのぬいぐるみ、『くまのコールテンくん』、『わにくん』。
大藤さん:マドレーヌちゃん、セサミストリート、『チャイクロ』。母がファッションデザイナーだったため個性的な洋服を着ていました。